出産前日の夜に入院したのですが。
その日は色々な人から頑張れメールが届き、夫も「元気に出産できるように」と好きなものを食べに連れて行ってくれたりと優しく、両親も香港に来てくれて、もしかしたら私はこれから死ぬんじゃないか、、と錯覚するような1日でした。
例えがアレかもしれませんが。神風特攻隊員に家族が万歳三唱して、送り出してくれる的な、、、。
出産当日、私は朝から人体実験の被験者になったかのごとく色々なセンサーだのチューブだの点滴に繋がれ、まな板の上のマグロ状態。
本当に、いよいよ死に向かっているんじゃないかと思わせるセッティング。
私が陣痛の序の口段階ですでにピーピー根をあげていたので、出産方法が自然分娩から無痛分娩(エピデュアル)に変更。
麻酔注射をブスブス背中に刺され、徐々に感覚がなくなっていく我が腹部。
このまま三途の川が見えてきそうな勢いです。
一旦麻酔が効いてくると、陣痛の大部分をまるっと回避しながら赤ちゃんの出現を待つばかりなのですが。
その待機時間中、私は悶々と
鮭のことを考えていました。
シーズンになると命をかけて河を登って産卵し、その後間もなく息絶えて一生を終える
あの鮭です。
もし私が鮭だったら、間も無く一生の幕が閉じるという瀬戸際が今なんだな、、、と。
ああ人生って儚い。
ついでに色々ググってみたんですが、
シャケに限ったことでなく、自然界には出産後もしくは交尾の後すぐ死ぬ生き物のなんて多いこと。 (イカ、タコ、カマキリ、サソリ、蜜蜂、、)
あくまでも生物学的に見ると、私が生まれてきた唯一のミッションともいえる繁殖行為を私は今体験しているんだなあ、、
マクロレベルで見ると私の存在意義はこれ以上でもこれ以下でもないんだな、、、
とぼんやり考えながら実にミジンコのような気分になりました。
とはいってもこれは悲しい気持ちではなく、どちらかというと、グランドキャニオン等の壮大な大自然を目前にし、自分の存在をちっぽけに感じてむしろスッキリさっぱりしてきた、、というのに似てるかもしれない。
そんなミジンコの気分で陣痛12時間経過。
出産するその運命の瞬間は、
強いて例えるならば、
体育会系鬼コーチにしごかれながら、鼻の穴からリンゴを出すような珍体験でした。
鬼コーチ、とは夫のことですが。
生死の瀬戸際に、
「さあ、もう一踏ん張りだ!!! You can do it!! Yea! カモーン!! もっと力を入れて!スクワットの要領だよ!さあさあさあ」
みたいなテンションで背後から1時間喝を入れられるというなんとも言えない体験。精神的に限界です。
正直、出てきた頃にはもう心身共に疲労困憊し、突如自分の股から現れた、血だらけで青白い生命体を目の当たりにしたときは「感動の嵐」というよりは「あまりの光景にショックで放心状態」といったところ。
(ごめんベビー。想像していたのと違ったのは私の勉強不足のせいだけど、、この時点では血色悪いのが普通なんだね。)
自分のボロボロな体が回復するにつれて色々と現実味と幸せが湧いてきて、今はとても安らかで満ち足りた気分です。
私は鮭でなく人間のため、この先人生はまだまだ続く、、ということで
引き続きお付き合いどうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m
育児が、いかに飼い猫の世話ともビジネスとも異なる体験か、、というような発見事の諸々についてはまた追々。